粋仙会:藤井龍仙の日記

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芯が出ない、滲(にじ)みが出ない

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今回のお題は
「芯と滲み」です。

淡墨作品を大きく左右する大事な要素ですが、
なかなか思ったコントロールが出来ないのも事実です。

いろんな先生に聞いても、
いろいろと違うのが実情で、
これといって完全にコントロールする方法は
未だありません。

そこで、
ナニが影響しているのが、
その原因というか左右するファクターを
あげてみます。

「芯」については
要は大きな煤の粒子が、
水と膠に乗り損ねて、
残った筆の軌道なわけで、
粒子が大きければ芯ができるんです。
墨の粒を擦り付けた感じですね。

では、なぜ芯が残らないのか?
墨の粒子が芯になれる大きさになっていないだけのことです。
もう一つ考えられるとしたら、
芯とにじみの濃さが全く一緒の場合です。

淡墨作品でも、墨液を使うと
この傾向は高くなります。

では、墨の粒子が大きくなるのはなぜか?

墨の濃さが一定しているのは、
墨の粒子が液体中に均等に分散しているからです。
均等に分散するためには、
水の分子運動と、
墨の粒子の小ささ、
膠の粘り(擬似乳化)が
うまくバランスしていないと
均等にはなりません。

墨液がこの世に出て
まだ半世紀も経っていないのは、
墨の均質を維持することが大変難しかったからです。

ここらへんの苦労話は
墨運堂のページを検索してみて下さい(笑)

話を戻して、
均等を維持するのが難しいということは、
放置すると、沈殿していくということです。

ってぇことは、
磨って放置しておけば良いということです。
これで、芯は出せる。

ただ、放置すると、
乾くだの、腐るだの、臭うだのと
副産物も多いので、
これについては、
宿墨のお題をご覧下さい。

墨の粒子が大きいと、
芯が出来るというなら、
松煙を使うか、
油煙を使うかは言うまでもありません。
粒の大きい松煙を使いましょう。
その差は、松煙は油煙の10から100倍の大きさです。
体積にすると10000倍以上の違いになります。
顔彩やポスターカラーを混ぜて使うのも
ありでしょうね…

書道の場合は
墨の粒子が均質でないことが、
墨色や厚みを生むので、
顔彩やポスカだけでは
立体感がなくなります。

他方、
「滲み」についてはどうか?
滲むためには、
墨の粒子を運ぶ入れ物と、
運ぶエネルギーが要ります。

運ぶ入れ物=膠
運ぶエネルギー=水の浸透力(毛細管現象)
例えて言うなら、
水は波のようなもので、
膠はサーフボードとも言えそうです。

サーフボードに乗れない人は、
その場に沈み、
乗れた人は、
波の行く方へどんどん遠くへ運ばれていく

ということで、
サーフボードはあまり大きくないようで、
小さな墨の粒子しか運びません。

ってぇことは、
粒子の小さい墨を膠にたくさん乗せれば、
たくさん滲むってぇこってす。
言い換えれば
たくさんの低分子膠に
粒子の小さい墨を混ぜれば、
良いってことです。

ちょっと待って下さい。
これって、唐墨の十八番ですよ。
ということは、唐墨の松煙墨を使えば良いってこと?
硬度の高い水を使うなら、
これもありです。

ただ、にじみは比較的楽に出ますが、
唐墨の松煙墨は比較的粒子が小さいので、
充分な大きさになるのをまっていると、
膠が完全分解して、
おまけに小さい墨粒子が
なくなる可能性が高いですね。

やはり、
芯とにじみは
別々に作って、直前に混ぜるのが
良さそうです。

淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D