粋仙会:藤井龍仙の日記

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宿墨って何?一度、腐らせないとダメ?

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今回のテーマは
「宿墨」です

聞きなれない言葉ですが、
淡墨をやる人の間ではよく使う単語の一つです。
墨のお宿ではないのであしからず。

さてさて、
みなさんは墨を磨って
そのまま放置したことはありませんか?

練成会などで使うために、
墨を多めに磨って
瓶に入れておいたことはないですか?

宿墨のそもそもの語源は、
硯に宿る墨=宿墨のようです。

乾いた硯に水を入れると、
溶け出してくる墨ような、
膠が切れた煤に似た墨の総称で
現在は使っています。

もっとラフに言うと、
炭素の粉に近い墨ともいえます。

間違って使われるのは、
宿墨=腐った墨
といった使われ方です。

確かに、
腐ると細菌分解で
膠が切れて別のものになるので、
宿墨+腐墨になりますが、
腐っていない宿墨もあるので、
宿墨という単語を使う際には
充分ご注意を…

ということで、
宿墨とは膠の高分子鎖が
加水分解でほどけて、
膠が低分子化し、
煤の粒子が相互にくっついて、
粒が大きくなった状態の墨
のことです。

昔は乾燥して、
硯にこびりついた墨のことだったようですが、
現在の書道界では、
こびりつかなくても、
時間を置いて作った
芯のよく出る墨のことを
宿墨という単語で表現しています。

かの昔は、
筆も紙も硯も墨も
全て貴重な品で、
モッタイナイ精神の副産物だった宿墨ですが、
今や、わざわざ作る時代になってます。
その製法は、
各社中の秘中の秘で、
決して、肝心なところは明かしません。

製法の基本は
「磨って放置!!」です(笑)
その後、まず研究すべきは
腐らせない方法、腐りにくくする方法
です。

腐っても、似たような表情は出しますが、
腐らなくても、
膠の加水分解が進めば、
宿墨になるわけですから、
わざわざ、あの臭気に
耐える必要もないと思います。

ということで、
宿墨を作るのに、
腐らせる必要はないという結論ですが、
腐ってしまった場合は仕方ないですね(笑)

淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D