粋仙会:藤井龍仙の日記

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膠(にかわ)の特性

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墨の主原料は煤(すす)と膠(にかわ)です
香料などは微々たるモンです。

さて、
膠(にかわ)というと、
いわゆる接着剤で、古来より使われてきた
天然材料です。

膠といっても
原料はさまざまで、
魚、ウサギの皮、牛の皮(三千本)など、
いろいろですが、
要はゼラチンです。

ゼラチンということは、
温度が下がると、
プルプルになるわけで、
冬に磨った墨を放置しておくと、
プルプルになるのはこのためです。

プルプルの境界温度はというと、
濃さにもよりますが、
だいたい20℃前後です。

淡墨で使う場合には
温度はほとんど影響ないです。

もうひとつの大きな特性は、
「腐る」ということです。
腐るということは腐敗する、
すなわち雑菌が繁殖して、
ゼラチンを食べて分解して、
くっさい臭いを
大量に放出してくれると言うことです。

ついこの前も、
大学生の超カグワシイ作品に
ひっくり返りそうになりましたが、
一度腐ってしまうと、
薄めて淡墨にしても、
臭いが広がるだけで、
もうどうにもなりません。

あーちょっと違いますね。
臭いの気にならない人は、
充分使えます(笑)
ただし、龍仙の鼻では耐えられません。

腐る=細菌が繁殖する=臭気を放出する
ということは、
最近の繁殖を抑えてやれば良い訳で、
殺菌、滅菌、除菌などができれば
臭い問題は解決します。

市販されている液体膠には、
温度変化に対応するためゲル化防止剤、
細菌繁殖に対応するためいわゆる防腐剤(消毒薬)が
入っています。
膠自身も決して良いにおいではなく、
特に魚の膠などは、
エモイワレヌ香りがします(笑)

墨に関して言うと、
基本磨った墨の保存は効かない。
持ってせいぜい2日です。
保存しようと冷蔵庫に入れると、
墨ゼリーの出来上がり、
溶かそうと電子レンジにかけると、
口についた乾いた墨=炭素が燃えたりして、
えらい目にあいます(笑)
暖める時は、
湯煎(お湯につける)にしてくださいね。

ただ、先生達は口をそろえて、
[淡墨は半日以上時間を置け」と
のたまうわけで、
毎回調合ではなかなか辛いものがあります。

時間をおくと墨がどうなるのか?
どんな変化をするのか?
「宿墨」のところと被る内容もありますので、
簡単に解説します。

膠の時間的変化というと、
生物学的には細菌繁殖、
化学的には加水分解
があげられます。

生物的時間変化は生ゴミと同じです(笑)
生物分解を起こしますので、
膠ではなくなり、
膠特有の粘性がどんどんなくなってきます。

一方、化学的変化の方はというと、
膠は水を吸収して、加水分解を起こします。
高分子がどんどん切れて低分子化する状態が
この場合の加水分解です。

低分子化で何が起こるのか?
それは接着力の低下です。
日本画などでは絵の具が剥がれやすくなります。
書道においては墨に潤滑性がなくなり、
筆のスベリが悪くなります。
最悪、表装の際に墨がはがれたり流れたりします。

加水分解の緩衝剤には
塩化マグネシウム=にがり
を使うのだそうです。

ただ、
低分子化によって炭素の粒子がくっつきやすくなり、
粒子の巨大化、多様化が促進されることで、
芯の強さや表情の豊かさが出ます。

今回のまとめ
温度:低い=ゼリー:高い=さらさら
時間:細菌の大好物=腐る=臭い=膠じゃなくなる
時間:加水分解を起こして低分子化し潤滑性がなくなり、炭素粒子が多様化する

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